ここ数日、またとっても寒くなってきて、ニューヨークのド冬な感じです。
例年と違うのは、まだ大雪が降っていないことぐらいでしょうか。
先日コタパパとおごちそうをいただきにお出かけしたんですが、その日の早朝コタと一緒にセントラルパークに行ったとき、死ぬほどえげつなく寒かったそうです。
ちなみにその日の朝は、氷点下14度とかだったはず。
コタは犬だから平気だろうけど、でも短毛種だしなー。
足の裏とかもきっとキンキンに冷たいだろうなあ。
そういえば、チョビとコタだとどっちが寒く感じるのかな?モフモフモフのチョビは一見暖かそうだけど、抱きついたら実は短毛種のコタのほうが暖かさがダイレクトに伝わるかな?でも、まだチョビが中犬ぐらいだった頃あまりの寒さにベッドに引きずり込んだら、ホカホカに暖かくてすぐ眠れたなー(チョビは必死のパッチで我慢してた)。
今度死ぬほど寒い日、コタを借りてみようかな。
湯たんぽがわりに。コタンポ。
寒いとどうも脳みそがからまわりします。
こういう無駄な思考ばっかりがグルグルグル。
それでですね。
先日やっぱりかなり寒かった夜、ダウンタウンから自宅まで市バスに乗っていたんです。
市バスというと、最近、便利なようでいまいちその便利さがスムーズに浸透していない、セレクトバスサービスというものがあるということを、以前ご紹介いたしました。
セレクトバスはいわゆるエクスプレスバスで、バスに乗り込む前にバス停備え付けのマシンで乗車チケットを購入しなければなりません。
それを持っていれば、長い二両連結のバスの3つか4つあるどのドアから乗り込んでもかまいません。ただ乗車中はそれをなくさないようにしないと、抜き打ちの検札で20ドル罰金を取られるハメになります。
もちろんこのセレクトバスだけではなく、乗車時に小銭かメトロカードで料金を支払う従来の仕組みの普通バスも走っています。自宅の最寄りバス停は、この普通バスしか停まらないので、私は普通バスの利用頻度の方が高いです。
セレクトバスは、時々かなりのバス停をスキップして突っ走るので、思いがけず遠くまで連れて行かれるケースもあるので、要注意ですね。
そろそろニューヨーカーたちの間にも、このややこしいシステムが浸透しはじめた今日このごろだったのですが、つい先だってのその市バスの中でのこと。
私が乗っていたのは、運転席横の乗り口から乗車して料金を支払わなければならない、普通バスです。
バス後方、三つ目の乗降ドアの正面座席に座っていると、数人の乗客がドアを開けて降りて行きました。そのドアが閉まりかかった時、見るからにホームレスなおじさんが、バッスーンとドアにはさまれながら、必死のパッチで乗り込んできました。
ニューヨークの市バスは、昔はかなり危険な乗り物でした。
特に夜間、運転手はそのルートによっては命がけの場合もあり、確か武器の携帯を許可されていた時期もあったのでは?
バス正面の行き先方面掲示板には、HELP. CALL POLICEというサインが常備されていました。これは今もあるのかどうかわかりませんが、昔は全然ヘルプでもなけりゃおまわりさんが必要でもないのに、このサインを堂々とともして街を突っ走る市バスをよく見かけたものでした(緊急時に全く役に立たん)。
マンハッタンが格別に安全になったというのも理由の一つですが、最近のニューヨーク交通局の職員指導要綱の一つに『ただ乗りしてくるホームレスに構うな』というのがあるらしいです(あくまで噂ですが)。かつては運転手がただ乗りしようとする客を怒鳴りつけ、バスから放り出す光景もよく目にしましたが、最近はすっかりそういうことはなくなり、この時も明らかに無理矢理ただ乗りしてきたホームレスおじさんを、運転手を始め全員見てみぬフリです。
そんなホームレスおじさんはまあいいんですが、そのホームレスおじさんがドアに挟まれながらドッバーンと乗り込んで来た後ろから、若者二名もドアに挟まれつつドッパーンガシャーンと乗り込んで来たんです。
あれ?
これってセレクトバスだったっけ?
と一瞬思ったんですが、いやいや違う。彼らが乗り込んで来たバス停は、普通バスしか停まらない所。
バスが発車すると思ってあわてて乗り込んだけど、これから運転席に支払いに行くのかな?
周辺乗客が固唾をのんで見守っていると、ホームレスおじさんと後からついて来た二名の若者は、並んで私の斜め前の長椅子に座りました。
まさか、この三人が連れ?
ってこた、いくらなんでもないよな……。
周辺乗客の関心がググっと高まりました。
さりげない注目を浴びている、三人組。
まずホームレスおじさんが動きを見せました。
何が入っているのかわからん大袋をガサーゴソーとかきまわし、中からこれまたさらにわけのわからんくしゃくしゃのビニール袋を出してきてはしわをのばし、ペタコンペタコンと丁寧にたたみ、また元の大袋に戻して行きます。
「几帳面なホームレス」
おそらく周辺乗客の脳裏には、この言葉が一斉に浮かんだに違いありません。
その間、その横に座った二名の若者のうち、やせた方がお財布をお尻ポッケから取り出し、隣の太った若者に「ねえ。どこで支払うの?」と訊いています。
『おお。ちゃんとわかってるんじゃんか。そうだよ私も払ったんだからお前も支払うんだよ』
周辺乗客、一斉に思いました。
その横で、またもやホームレスおじさんに動きが。
ガサーゴソーガサーと大袋を脇によせ、今度は分厚いジャケットの下から手を入れ、お尻ポッケをゴソゴソゴソーっと。
『おお。ホームレスおじさんもメトロカードを持ってるのか?これから支払うのか?』
周辺乗客、心の声。
なかなかポッケから手が出ないおじさん。
がんばれおじさん。
ていうか、そんなに分厚いお財布を持っているのか、おじさん?
まさかもしかしてホームレスじゃなかったら、とんでもなく失礼だったかも。
あまりにもおじさんがお尻ポッケから何かを出すのに四苦八苦しているので、隣に座った二名の若者も、なんとなく会話をとめてそっちをチラ見。
お尻を半分浮かせてやっとお尻ポッケから何かが出て来た。
と思ったら。
なんとそれはお財布ではなく、マクドナルドの1ドルバーガー。
ハ。
ハンバーガーが尻ポケットに……。
周辺乗客の息が停まりました。
しかもおじさんの手の中にあるハンバーガーは、ぺったんこかと思ったら、全然丸まるとしてフカフカな感じ。
し、尻ポッケに入っていたハンバーガー。
あれを食べるのか……?
いや。その前に、お尻ポッケに入っていた上に、バッスーンと座席に座っていたのに、なぜフカフカ?
周辺客の目が尻ポッケバーガーに釘付けになっている間に、横の若者二名がまた会話を始めました。
「で?どこでいつ料金を支払うんだい?」とやせた若者。
そうか。よその州から旅行にきたんだな、彼らは。
市バスに乗るのが初めてで、思わずホームレスおじさんの後ろについて飛び乗っちゃったわけね。
「ああ。料金かい」と太目若者。
その会話の間も、ホームレスおじさんの手にあるハンバーガーが気になって仕方ない。食べるんだろうか?バスの中で?尻ポッケのハンバーガーを?
「まだ料金を払ってないんだよ、僕」とやせ若者。
そうだよ。お前らまだ払ってないのに、3つぐらい停留所すぎちゃったよ。早く払えよ。
「ああ。料金は払わなくていいんだよ。このバスは乗り降り自由だから」太目若者。
違うだろう!!
「えええ?払わなくていいのかい?市バスなのに?じゃあこのメトロカードは?」やせ若者。
そうだよっ!そのお前の財布に入ってる黄色いメトロカードで支払えよっ!
「払わなくていいんだよ。どこからどこにでも、乗り降り自由。ホップオンホップオフバスさ」と太目。
何を言うとるんじゃ!どこで訊いてきたんじゃそんなヨタ話をっ。
「そうかい……?おかしいなあ……。じゃあマンハッタン中どこでもタダ?そんな風にはきかなかったけどなあ……」とやせ若者。
「いや。キミは間違っている」太目。
間違っとるのはお前の方じゃっっっ!!!
今にも立ち上がって説教くれたろかっっ、と思った瞬間、ホームレスおじさんがガッサー!と立ち上がり、右手で大袋、左手にフカフカ尻ポッケバーガーを大切そうに持ち、しずしずとドアからおりてゆきました。
「ほうら」と太目。
「ふうーんそうか。。。」とやせ若者。
違う。
違うんだ。
違うんだけど……。
ホームレスおじさんの堂々とした態度に、誰も何も言えないまま、バスは夜のマンハッタンをひた走っていきました。
↓どっとはらい。
twitter/reikotakeuchi



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