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2009年2月 2日 (月)

インドな病院<8>

仕方ないですよね…。
何百回説明しようが、相手に伝わらなかったら、そこには『コミュニケーション』は存在しません。
説明しましたよ。最初から。
日本でインタビューを受けるので、健康診断は日本の指定病院で受けなければいけない。
そこで日本の指定病院に予約の電話をかけたところ、アメリカの病院で予防注射を受けてきてもいいですよ、と云われたこと。
NYのかかりつけの医院に電話をかけたら、予防注射は指定病院で受けてください、と云われたので、ネットで調べて自宅最寄りのこの『インド病院』を発見したこと。
そして、今となっては後悔先に立たずだけど、ここにこうやって来てしまったこと。(←いやまさか、これは云わなかったけど)
そんでもって、さっきからインドトリオに大笑いされながら、この世のものとも思えんぐらい痛い注射を、すでに二本打ってもらったこと。
今この部屋に居るのは、おっさんに(いや、医者だけど)予防注射証明手紙を書いてもらうためであって、健康診断について説教くらうためではないこと。
全部全部説明しました。

でも、険しい表情の茶色ドクターは、首を傾げたまま無言です。
『理解できん』という表情丸出しです。
うう。
泣きたくなってきましたよ…。

そこへ入室してきたチョッキ医者。
茶色ドクターがチョッキに質問しはじめました。
もちろん強烈なアクセント英語で。
そしてもちろん、ほとんど理解できません。
一方チョッキ医者の英語は、あまりアクセントが強くないので理解可能です。

「いえ。彼女は健康診断は希望していません。MMRとTDの接種のみを希望していますので、先ほど接種しました。接種済み証明のレターを書いて手渡す必要があります」

眉間にしわを寄せて聞いていた茶色ドクター。

「オオーウウ。そうか!なんだそうなら話は簡単じゃないか!」

だからそうなんだよっ!
最初の始めから、話はチョー簡単だったんだよっっっっっっっっ!!!!
おのれらが人の話を全然聞かんから、ややこしいことになるんじゃっっっっっ!!!

とわめきながら、ビリビリに破れた回転イスを投げ飛ばして大暴れしたら、どうなったでしょうかね。

それならすぐにレターを書いてあげよう。
と言いながら、茶色ドクターがシャカシャカッと手紙を書き始めました。
『ここにミス・レイコタケウチに予防注射したことを証明します』と書いている英語は、とてもきれいな字です。
しかし茶色ドクター、予防注射の種類のところで筆がピタ、と止まりました。
しばしペン先をウヨウヨウヨッとさせた後、TDと書きました。そしてそのあとも、シャシャシャシャシャ〜と何喰わぬ顔で書き続けます。

ん?
なんか注射の名称が一個しかないような?

気になるのですが、余計な事を云って混乱させるとますますわけのわからんことになりはせんかと心配で、口を出すのを躊躇してしまいます。
すると、シャシャシャ〜っと書き続ける茶色ドクターを見つめていたチョッキが、口を出しました。

「MMRもです」

「ああ?」

「MMRも書かないと…」

「…ん?」

またもやペン先をウヨウヨウヨッとさせる茶色ドクター。しばしウヨウヨウヨウヨ…。まだまだウヨウヨウヨウヨウヨ…。じーっと待つチョッキと私。
ウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨ。

っかーっっ!
書いてやろうか私がかわりにっっっっっっっっっっ!!
MだよMっっ!
その次もMっっっっ!ABCDEFGHIJKLMのMだよっっっっっっっっ!!Mが二個っっっ!
それからRだよRっっっっ!Qの次に来るRっっっっっっっ!!!
エムエムアールッッッッッ!!!!!!!!!!きいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっっっ!!!

もうマジで髪の毛をかきむしりたくなりましたっっ!
無言で待つチョッキと私でしたが、頭の中は大荒れの海です。
さんざんウヨウヨウヨウヨしまくった挙げ句、何故かTDと書いた前の狭いスペースに、無理矢理MMRを書き込んだ茶色ドクター。

「さ。これで満足?」

言いながら私に微笑みかけましたよ。
これで満足?
ってああた。
満足ってのはこういう場合、あてはまる言葉なんですかね?え?
まあそのなんですよ。満足っていうか、やっと終わったっていうか、やっと解放されたっていうか。そういう気持ちも満足って呼んで良いなら、はあまあ満足ですよ。はい。

じゃ受付で待っててね。
とチョッキに言われ、受付まで出て行きました。
すると、受付に並んでいたボロソファは全て空。
受付はもぬけのから。
無人です。

え?あのズボボボガキは?どこに?え?え?

こわかったけど相当気になっていたんです、あのガキの行く末が。
ぐんにゃりしていたガキを横目に、携帯でしゃべりまくっていた母親ぽい人。彼女に任せていていいんだろうか?って、結構心配していたんです。
え?え?
思わず受付小部屋のおっさんに問いただしてしまいました。

「あの。そこに子供がいたと思うんだけど…なんか、心配で…」

「あの子供は具合が悪い」

↑この会話ね。こうやって日本語で書くとベターってしますけど、英語だとこうなります。

"I think there's a kid waiting...I kind of worry about him.."

"Oh. That kid was sick"

でもって、これは別の会話に置き換えるとこんな感じにもなります。

"How much is this?"

"Expensive"

「これいくら?」

「高い」

なんていうか、身もふたもないっていうか、有無を云わせない返事っていうか。
具合が悪いから病院に来ていたんだろうし、それを「病気だ」て云われても、なんかなんとも納得がいかんです。
これ読んでる皆さんが
『なんじゃいそりゃ!ガキの行く末を心配していたのにっっ!』
ってお思いのお気持ち。わかります。だってこのときの私が、まさしくそんな気持ちでしたから。

割り切れない気持ちのまま、証明書を待つこと10分。何故かトリオが次々と現れ、「もう終わったの?またおいでね!」と挨拶してくれました。
アンタ。病院に『またおいでね』はないんじゃ…。
フレンドリーにしてくれるのはうれしいんですけど…。それにまあ、はっきり云って、多分ここにはもう二度と来ないんじゃないかな、って気がするんだけどね…。

ほどなくチョッキが現れ、満面の笑みで封筒を手渡してくれました。
封筒の口はセロテープでベタベタと封をされ、『ブルックリン医院』(みたいな感じの名前)というゴム印がベタベタと押されていました。
封筒の表には、もちろんこう書かれていました。


『移民局用健康診断結果』


おあとがよろしいようで。

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ブルックリン」カテゴリの記事

コメント

リンコさん、お疲れさまでした。
「身もふたもない・・・・・」。
その一言でこの病院が存在する意味があるんでしょうか??????
神隠しにあってほしいリストがあったら一番にしたいくらいです。
リンコさんの体験でこうですからもし自分がそこにいたらと思うと恐らく何らかの形で警察の厄介になってることでしょう・・・・。
何はともあれお勤めご苦労様でした。

投稿: LEHUA | 2009年2月 3日 (火) 21時01分

やぁぁぁっと終了したんですね。本当にお疲れ様でした!心身共にすっかりお疲れになったことでしょう。日本で「こんな怪しいレターは信用できん」と言われまたいちからやり直し!とならない事をお祈りいたします。それにあの子供。誰が見てもスッゴク具合悪いのが分かるって!つくづくどうにもこうにもな所でしたね。

投稿: みさ | 2009年2月 3日 (火) 10時02分

後から現場にいない人間はどうとでもいえるんですが・・・(笑)

丁寧に説明しすぎたのかぁなぁ~
単純に「このリストの内2種類の予防注射をして欲しい。そしてその証明書が欲しい。」で良かったかも?!
「なぜ?」って聞かれたら・・・・
「日本の病院で言われた」って・・・・
ん~無理かぁ!?

ところで・・・
「♪恵方は~どぉちだぁ~?!」
(明日のジョー風に!!(笑))

投稿: や!です。 | 2009年2月 3日 (火) 01時40分

最後まで楽しく読ませていただきました♪
どこでリンコさんがキレてしまうのかと、ドキドキハラハラしながら…
日本での検診は無事にスムーズに終わりますように…

投稿: ぶんた | 2009年2月 2日 (月) 22時59分

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