ピザ屋その後
行ってきました衝突ピザ屋。
ドアマンのスティーブが調べてくれたピザ屋の名前が載っていたウェブは、yelp!というなんかよくわけがわからん情報ウェブサイト。レストラン情報なんかもすごくたくさん載っているんだけど、私にとってはちょっとうさん臭い雰囲気が漂う情報サイト(理由は無い)(←ヒドい)。
そのyelpの説明文を読んでいると衝突ピザ屋の評判は上々。なんと5つ星ランキングで4つ星をゲットしているし、カスタマーレビューも素晴らしく良い。ううーん。複雑。そんなに美味しいピザだったら絶対食べてみたいんだけど、こんなモメごとがあった後には注文しにくいよなあ…。うーんうーん。
食い意地と交通事故への怒り。秤にかけるとちょっとだけ食い意地が勝ちそうになったけど、やっぱりそれじゃあ人としていかんだろう、と食い意地を無理矢理押さえ込み、なんとか予定通りねじ込みに行く事にしました。
そして、なんかしらんけど予定通りポール選手が付き添いで来る事に。
「で、レイコ。実際の所どうしたいの?」
「どうしたいって?」
「いや。こうして文句を言いに行って、どういう結果を望んでるわけ?医者代とかは相手は出さないと思うよ」
「うーん。そりゃさ、医者代は保険でカバーされるけど、なんかそれって理不尽だと思わない?もし私が保険を持ってなかったら、私はお医者代金も泣き寝入りすることになるの?相手が100%悪い事故のケースなのに?」
「キミの気持ちはわかるけど、もしお金を請求するんだったら訴えないとダメだよ」
とはいえ、私は別にお金が欲しいわけではありません。
どうしたいのかというと、やっぱりきちんと謝ってもらい、今後こういうことが二度と無いようにちゃんとオーナーも従業員も心構えを新たにしてもらいたいし、それを私に誠意を持って約束してもらいたいんです。
「なるほど。それならそういうことでちゃんと話しに行こう。ボクは後ろで黙ってみてるからね。自分でちゃんと話するんだよ」
へいへい。だから最初から一人で行くって言ったのに。
「ボクがピザをタダでもらえるかも、って言ったのはジョークだからねっ」
へいへい。わかってますってば。
小姑のようにくどくどと何かしらんけど言い続ける巨体ポールを背後に付き従え、ピザ屋まで徒歩3分。
はいそうなんです。
自宅から2ブロックのところにあるピザ屋だったんです。
大体、こんなに近いんだから自転車で配達するなよ。
さて。ピザ屋に入って行くと、カウンターの奥には白髪で年配のイタリア人丸出しのおっさんと、黒髪の若者(実はかなりイケメン)が一人。
白髪のおっさんがにこやかに「ハーイいらっしゃい!」と声をかけてきました。
「フランクいますか?」
「え?誰?」
「フランク」
絶対このおっさんがフランクに違いあるまい、と思いながら繰り返すと
「ああ。フランクなら彼だけど、何か用?」
意外にも黒髪のイケメンがフランク。
ならこのおっさんは誰?たしかフランクは電話で「ボクとボクの兄弟がこの店のオーナーだ」って言ってたはずだけど、このおっさんとフランクが兄弟だとしたら、腹違い?と思えるぐらい風貌は似ても似つかないし、親子かと思う位年も離れているように見えるんですけど。
奥にいたフランクが何か言った(多分イタリア語)のをきいて、突然表情が硬くなったおっさん。
「何か用なら私が聞くけど?」
ちょっとだけ考えて
「おたくの配達君の自転車にはねられたんだけど」
と言ったらおっさん、「は?」としらばっくれた態度。
「おたくの配達君の自転車にはねられたんだけど、って言ったんですけどね」
もう一度繰り返すと、ちょっとまて。と身振りで示し、キッチンにむかって怒鳴り、件の配達君が登場しました。
「彼かい?」と訊かれ、まさしく私をはねた黒髪の配達君だったので「そう。彼です」と答えると、
「お前、この人を自転車ではねたのか?」と言う感じの質問を(多分スペイン語)したおっさん。
それに対して配達君。
なんと首をすくめて両手のひらを上にあげ、首を振るんですよ。
「彼は知らないって言ってる」
瞬間的に脳天に血が登り……カウンターを飛び越えて、そこら中のピザをアルミの皿ごと投げまくって、ピザ用のでかい木のヘラをブンブン振り回して大暴れしたろかっっっ……、と思った瞬間、私の背後で睡眠中の像みたいに大人しくしていたポールが突然の大噴火。
「おいこらちょっとまてっっ!なんだその態度はっっ!!」
ヒー。
すごい大声。
普段蚊の鳴くような声しかださないポールが〜…。ひいいいー。
「そうか!そういう態度で正面きって嘘をつくんだったらこっちは警察に行くまでだっっ!こっちにはビデオも写真もあるんだからなっ。よしっレイコっっこんなところに長居は無用だ!」
そう怒鳴って私の腕をとるポールさん。
ひいいいいいいいー。
大声で耳が痛いよう。
それに私だってブチ切れしたかったのにいー。
「いやちょっと待て!警察って…」
「待て待て待て!」
「うるさいっっっっ!グダグダお前達の泣き言なんか聞きたくないっっ!嘘をつくな嘘をっっっ!!」
「証拠の写真やビデオがあるというなら見せてくれ」
「ああ見せてやるとも!売るほど見せてやる!!さっレイコ!!!」
さっレイコ!!!!…って言われても…。私のこのふりあげた拳はどこにおろせば…。
「レイコっっっ!!」
わ、わかったよわかりましたよ…。
脳天に血が上ったのにそれをどこにも爆発させられず、ものすっごーくもやもやした気持ちのまま、手に持っていた青タン激グロ画像をおっさんたちの眼前につきつけました。
「…オー…」
さすがのグロ画像に、おっさんたちもちょっと無言。
「そもそも歩道を自転車で走るのが法律違反だってわかってるのかっ?この間の事故だって、たまたま運がよかっただけで、酷い場合は彼女が死んだっておかしくないような事なんだっ!!!お前ら、このまま警察に訴えられたら営業停止だぞっっっっ!!!」
凄いです。ポール火山、鎮火しません。すごい勢いで大噴火中です。
おっさんたちが口を開くと、声を出す前に「じゃかましいわっっっおのれらのくだらん言い訳なんか一言も聞きたくないわっっっっっっっっっ!!!」という勢いで怒鳴りまくりです。おっさんたち、どうする?
「わかった。わかった待ってくれ。じゃあどうしたいんですか?あなたはどうしたくてここに来たんですか?」
やっとポール火山の噴火の合間をぬって、私に問いかけたおっさん。
「私はあなたたちにちゃんとどういうことが起ったのか知ってもらって、ちゃんと謝ってほしくてここに来たんです」
という私の言葉が終わるか終わらないかの瞬間に、フランクとおっさんと配達君二名、いっせいにそろって両手を広げ
「オーーーーーーーーーーーー。アイムソーリーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
イタリアなまりの英語で
「オーーーーーーーーーーーー。アイムソーリーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
まるでカンツォーネみたいなよくとおる声で
「オーーーーーーーーーーーー。アイムソーリーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
…なんか…
なんか、ごまかされているような気が。
まだ頭から湯気をだしているポールさん。
英語がよくわからない配達君に、スペイン語で何事か言いました。配達君二名は、それをきいてウンウンと頷いてキッチンに引っ込んで行きました。
「本当に申し訳なかった。彼は自分がクビになるかもしれないと思って、すごく怯えて嘘をついたんだ。許してやってほしい。私はマリオ。よろしく」
文脈が変なセリフであやまるおっさん。
おっさん、マリオいうんか…とバカ受けしまくって、思わず笑いそうに。
何度も「よければディナーを食べていってくれ。ピザもごちそうするよ」と言うマリオとフランク。悪い人たちじゃないのは、本当によくわかります。何事につけ、サバイバルなNY。簡単に謝ったら負けなのだ。相手が何を要求しようとしているのか、素早く見極め保身の道を賢く選ばなければ、すぐに転落してしまう厳しい人生を誰もがなんとかして生き抜いてきているのだから、彼らを一概に責めることもできないということもよくわかります。
「また来ておくれ。ピザをごちそうするよ」って言ってくれたマリオもフランクも、こんな風な出会いじゃなければ気の良い近所のピザ屋さんだったのにな。ってちょっと残念です。
さて。帰り道、ポール火山にスペイン語でなんていったのか、聞いてみました。
「今度同じ事をやったら、次は警察に連れて行くからな!絶対歩道を自転車で走るなよ。って言った」
ということでした。
あのデカいポールにあのデカ声でそんなことを言われて、配達君も寿命が3年ぐらい縮んだかもなあ。
ちょっと気の毒。それに、私だって思い切りブチ切れしたかったのに。ピザ皿投げまくって木のヘラを振り回して、ピザのぶよぶよの生地を10枚ぐらいフリスビーみたいに投げ飛ばして、大立ち回りをしたかったのに、不完全燃焼の私も、本当に可哀想…。ああ、悔しい…。











































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