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2011年9月26日 (月)

911 First Responder Day続き

また明日、と言っておきながらはっと気づくと2日も経ってしまいました。
この間何をしていたかといいますと、チョビの見張りとチョビのゴハンの支度とチョビのトイレの始末とチョビの付き添いとチョビのマッサージです。
そして、私もどうもストレスが続いたせいか(床ばばあとかエロじじいとか色々あったし)、胃が痛くて胃が痛くて食い意地95%減。
外食のお誘いをいくつかいただいたのに、全部お断りしなければならないほど結構辛かったです。そして、今でもちょっとまだ本調子ではありません。
毎日毎日、チョビのウ○チ状態に一喜一憂したり、チョビがヨロけたと言っては大慌てしたり。
これはあまり健全じゃありません。
リラックスするために、一昨日あたりから一人でお散歩に出かけるようにしています。
チョビはやっぱり4度目のキモセラピーのお薬が強かったせいか、少ししんどそうなのでお散歩はしばらくなしかもしれません。
お家でのんびり過ごして、ゴハンをたくさん食べてたくさんお昼寝して、チョビなりにゴキゲンな日々のようです。

さて。
First Responder Dayです。

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↑知り合いが消防士さんなのかな。

この写真の人が何をしているかと言いますと、白い長細い紙と木炭のような太めの芯のペンを手に、縁石に刻まれた犠牲者の名前を紙に写し取っているんです。

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↑彼らも。

愛する家族の名前なのか、まわりの雨を拭い取り、刻まれた名前に口づけている人がいました。

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↑こんなにこんなにたくさんの人が。

かつて立っていたノースタワーとサウスタワーの位置に置かれたメモリアルの噴水。
まわりをぐるりと囲んだ大理石に、たくさんたくさんの方々の名前が刻まれています。
恋人、伴侶、友人、同僚、父、母、息子、娘、兄、姉、弟、妹。
一体何人の人が、大切な人をこの日失ったことか。
ゆっくりと大きな噴水の回りを歩いていると、日本人の方々の名前を見つけました。

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↑もっともっとたくさんの日本人の方々の名前がありました。

こうして日本人の名前を見、ハっと胸をつかれる思いがしました。
どうしても身近に感じられる日本名。
改めて「こんなにたくさんの人達があの日、わけもわからず命を奪われたんだ」と強く感じました。

この名前を刻んだ縁石ですが、名前を刻んだ順番は、会社なら同じ会社の、そしておそらく同じ人種の人達を並べ、消防士や警察官は本来所属していた分署でまとめられているそうです。
共に働き、仕事中におしゃべりをしたり、ランチを一緒にしたり、仕事帰りに駅まで一緒に歩いたり。そんな同僚達と、こうして一緒に並んだたくさんの名前、名前、名前。
せめてここでは寂しくないように、という心遣いが感じられました。

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↑こんな悲しい墓碑銘も。

女性の名前とそれに続けて『そして、彼女の産まれてこなかった子供』と刻まれています。
妊娠していた女性があの日犠牲になったのです。

最後の瞬間まで、勇敢に状況を伝え続けたスチュワーデスの方の名前も見つけました。
そして、ポールはとってもお気に入りだった後輩新人消防士クリスチャンの名前を見つけました。
クリスチャンは本来ポールと同じはしご車隊所属だったのですが、911前夜からの夜勤で、911当日の朝、交代でやってきたトロイという黒人の消防士さんに『じゃあ僕は131(はしご車隊)に戻って、キミは271(放水車隊)で運転するかい?(二人とも消防車を運転する任務でした)』と訊いたそうですが、トロイが『いや。はしご車の運転をもうちょっと練習したいから、このままにしておいてくれ』と頼んだそうです。
そしてその後すぐ緊急コールが入り、全員が出動し、クリスチャンは本来所属していないはずの放水車隊に乗り込み、しかもこの日は前回書いたショーンさんが運転をしていたため、他の4人の消防士達と一緒に、消防署に勤務して1年も経たぬこの日、命を落としてしまいました。
クリスチャンのお母さんは現在、ファイアデパートメントや、勤務中に命を落とした消防士たちのための様々な活動を行う運動家となって活躍されています。今でも、彼女がテレビでアグレッシブに語っている姿をよく見かけます。そして、彼女のそんな姿を見るたびに、とてもとても胸が痛みます。
大切な息子を失ったつらさを、彼女は運動家となって活動しつづけることで乗り越えようとしているのですが、その強い表情の奥にはいつも、深い哀しみと強い怒りを感じます。きっとこうしなければ耐えられなかったんだと、見ず知らずの私にさえ痛い程伝わってきます。

後日談ですが、この日クリスチャンの代わりに偶然命拾いをしてしまったトロイさん。
テレビのインタビューを受け(全国放送)、この日のクリスチャンとのエピソードを堂々と語ってしまったんです。彼にしてみれば、贖罪の気持ちもあったのでしょうし、自分一人の胸にしまっておくことに罪悪感も感じたに違いないと思いますが、これをテレビで見てしまったクリスチャンのお母様が本当にお気の毒で……。
怒り続けること、大きな声を挙げる事、拳を振り上げる事を必死で抑え、良き方向へそのネガティブなパワーを向けようと必死で生きていた彼女にとって、『息子は死ななくてすんだのに』という思いがどんなに辛かったことか。
誰も悪くない。
それはわかっていても、それでもこの怒りをどこにぶつければ良いのか。
どんなに苦しい思いをされたことか。
そして、彼女の怒りはマグマ級のパワーでトロイにむかって爆発。
御主人と一緒に泥酔状態で消防署に怒鳴り込んできたそうです。
もちろん『トロイを出せ!!!』状態です。

その後、その場を誰がどんな風に収拾したのかは聞きそびれましたけれど、あの日以来、ここに名前を刻まれた人達の、その何倍、何十倍、何百倍もの人達の人生の歯車が大きく狂い、そしてそれは今でも密かに苦しい音をたてながら、それでも必死で回り続けています。

以前にも書きましたが、ヴァチカンの『愛は憎しみより強く、何ものにも勝る』という言葉を私は信じません。
だって、くすぶり続けた大きな怒りと苦しみが、またこんなにも大きな憎しみと怒りを生んでいる。こんな怒りの前には、どんなに愛を説いても相手の心には入っていきません。
たった一つ愛が伝わる方法は、その人が自分で見つけることだけだと私はいつも思っています。
答えは自分で見つけなければ、永遠に自分のものにはならない。
いつもそう思っています。
愛であれ怒りであれ赦しであれ、自分で見つけ自分で手にしなければ、それはただの言葉でしかありません。

大勢の観光客や見物人がいない、FDNY関係者だけのメモリアルだったせいもあるでしょうが、ただただ静かで穏やかで平和な空気に満ちたこの場所に立ち、世界中の皆が一つの言葉を持つ事の素晴らしさと難しさを改めて感じました。

世界は矛盾や納得の行かないことに満ち満ちています。
床ばばあだのエロじじいだの、日常の些末な事にストレスを溜め込んで、愛犬の健康状態に一喜一憂する日々にあって、時にまるで天から自分を見下ろすような気持ちになれるこういう場所に立ち、心の空気を入れ替えることができれば、また私の中のきしんだ歯車も、少し滑らかに回り出すような気がします。そして、そんな静謐な空気は、多分ここに名前を刻まれた多くの失われた尊い命が、どこかからいつも見守り与えてくれているんだという気配が、不信心で感謝の気持ちがたりないダニな私にも感じられました。

そして、ここが観光の場ではなく、私たち未だ生きながらえている者達が立寄り、足を止め、心の空気を入れ替える場所となってくれることを、心から祈ります。

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↓是非、皆さんも行ってくださいね。
twitter/reikotakeuchi
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ニューヨーク」カテゴリの記事

コメント

確かにきっかけはなんであれ、自分で納得して自分から変わろうとしなければ、自分のものにならないというのは真理ですねぇ。
いろいろ思うことはありますが、まだ整理もつかず言葉選びもうまく出来ません。
大切なこと。でも日々の忙しさで忘れがちなことでもあります。
リンコさんがおっしゃるように、ここが心の空気を入れ替える場所となることを私も祈ります。また世界中にある他のそういった場所が悲しみだけを思い出すのではなく、心の空気を入れ替えられる場所であるよう祈ります。
ところでリンコさん、ストレスにはほんとに気をつけてくださいよ。
私は十二指腸潰瘍、胃潰瘍で苦しみ、潰瘍痕になるべく努力してますが、いて~よ~。こんなの出来ればどなたも経験しなくていいとマジ思ってますので。

投稿: KIYO | 2011年9月27日 (火) 04時00分

10年という月日が過ぎて……周りはもうそんなに、って思うのでしょうけれど、生き残った事に罪悪感を感じたり、今だに新しく病院にPTSDの症状で受診される方も絶えないのだ、と先日テレビの取材で見ました。 

普通に、懸命に生きていただけなのに、つらい思いをしたのに、まだ終わらないというのが、あの事件の罪だと思います。 


いつか、私もあそこを訪れてみたいと思います。 

工事中の横を通っただけなので。 

投稿: たかたか | 2011年9月26日 (月) 07時21分

来年ニューヨークに行く予定なので、まず立ち寄ってみようと思います。たったひとつの事故、事件、天災で、人々の日常が180度変わってしまう…世の厳しさというか、人の世の、これが常なのかも知れませんね…

投稿: Maggie | 2011年9月26日 (月) 03時47分

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