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2011年9月13日 (火)

チワワ劇場

昨日はチョビの三度目のキモセラピー。
リンパ腫と診断されたけれど、脾臓を摘出した今チョビはいわゆる寛解期というやつで、がん細胞は体の中にはありません。
現在続けているのは再発を防ぐためのキモセラピーで、週一回。これが8週間連続と、その後は1週間おきに8回、計25週間続きます。プロトコールが終了するのは来年二月の予定ということで、全体的に気が遠くなる感じです。
どんなに低用量とはいえ化学療法なわけですから、体調と薬の種類によってはダルそうだったりゲ○するチョビを見ると、ああかわいそうにかわいそうにかわいそうに、と罪悪感に苛まれます(本人はほとんど気にせず『ゴハンゴハンゴハンゴハン』って言いますけど……)。

そういうわけで、昨日は三度目のセッション。
ドクターハミルトンが出てきてくれて、キモセラピー部屋(ていうのがあるんです)にチョビを連れて行きました。
そして、今回のチョビ番ポール(マッカートニーじゃない方)と二人で、待ち時間にお茶でもしに行こうか、と相談しているところに、ドアがバーン!と開き、ドカドカドカッッとカップルが駆け込んできました。
彼女の腕の中には、白と茶色のまだら模様ロングヘアーチワワが抱かれています。カワイイ顔をしたチワワちゃんは、小さなお口の横からピンク色の小さな舌がペロリンと出ていて、これまた愛嬌たっぷり。
あらカワイイわ。
って思って見ていると、彼女が応対したナースに必死のパッチで訴え始めました。

「落としちゃったんです!」

『犬を落としたらしいよ』
それぐらいわかるわい、というようなことを大きめのコソコソ声で説明してくれるポール。

彼女達の尋常ならぬ雰囲気と、「犬(かなり小さい)を落とした」という説明に、待合室にいた大勢の犬猫待ち飼い主達の注目度が一気に急上昇。
ちなみにその場にいたのは、チョビサイズのグルグル巻き毛犬(種類不明)の飼い主おじさん一名、黒い中型犬の飼い主一家3名、チョビの2.5倍ぐらいある立派で美しい老シェパードの飼い主おばさん1名、茶色と白のブチ猫飼い主カップルの女性2名と、私たち2名の合計9名。これに駆け込んできたカップルを足すと11名です。
いつも静かなこの病院にしては珍しく、待合室は満杯。
そして、この残り9名の注目はブチチワワとその飼い主カップルに集中です。

固唾をのんで見守る8人。
ナースが「オッケーわかったわ。今すぐ診察室に連れて行ってドクターに診てもらいますから」とブチチワワを受け取ろうとするんですが、完全にテンパっている彼女は
「舌が。舌が横からでてるのよっ」と声はうわずり手もわななと震え、なかなかチワワンを渡そうとしません。
「オッケーオッケー。わかりました。今すぐドクターにみてもらいましょう。さあ」
と手を出すナース。
「いつもだったらよその人に抱かれると死ぬ程怖がるのに、今日は全然違うのっ。どうして?どうしてなのっ?舌が。舌が横から出てるっ」
テンパっています、彼女。
その場に居たストレンジャー9人は、全員ガン見です。
そして、全員内心こう思っていたはず。

『舌はわかったから。どこからどう落としたのか早く説明せんかい』

ポールも「落としたって、一体どういう風に?」とボソッと独り言を言っています。

9人分の疑問を取り残したまま、ナースはチワワンを抱っこしてさささーっと去ってしまいました。

チッ。

9人の舌打ちが聞こえてくるようでした。

いえ。全員愛犬愛猫家ですから、何も面白がってるとか人の不幸が楽しいとか、そういうことではないんです、絶対。
でも、こういう状況だとどうーしても知りたくなるんですよね。
『一体全体どういう状況だったのか?』

『実際のところ、あのイヌの容態はどうなんだろう?』
が。

問診表に記入している間も、呼吸が荒く完全にパニクっている状態の彼女と、なんとなく存在感がうすーい彼氏。
わなわなと震える手で書類を記入している彼女に、9人の目が集中しています。
もちろん
『お前が記入しろよ』
という、彼氏に対する気持ちがその視線に込められています。

ガタガタ震えている彼女に、チワワンを連れ去ったナースがやってきて質問をしました。

「あなたの犬は、今安定した状態に見えるようですけど」

「でもっ。落としたんです!そのあと舌が横から出て、目もボーっとして、それからなんとなくぐったりして……」

「ええ。でもドクターは問題ないと考えているようですが」

「でもっ!舌が横から……」

『もう舌はわかったちゅうのに』と、9人分の心の声が待合室に満ち満ちています。

「ところで、どういう状況だったんですか?」

『待ってました!!』x9人

「じょ、状況って?」

『落ち着け彼女。お前が説明せんかい彼氏!』x9人

「どういう風に、どれぐらいの高さから落ちたんですか?」

『それだよ!早く訊けよ!ていうか、早く答えろよ!』x9人。

やにわに立ち上がった影の薄い彼氏。

おおっっと見上げる9人。

「こうやって抱っこしていて、こういう風に床におろそうとした時に、ここからこう落ちて……」

彼氏の身ぶり手振りを交えた大熱演。
その『ここから』の瞬間、9人の熱視線は最高潮に

「……そこから」

繰り返したナース。

彼氏のチワワンを抱っこしている手つきは、彼のヒザあたりにおろされています。

……って。
おい。
ヒザかよ……。

9人全員思いました。
間違いなく。

『おい。ヒザかよ』

しばしの沈黙。
彼女の涙をすする声だけが響いています。

「……ということは、そこからこう、床に落ちて?それで犬は意識を失ったとか?」
ナースの質問。

「いいえ!でも舌が横からベローンと出て……」

「ええ。ええ。舌がね。小さい犬は大きな犬よりも痛みやショックに弱いんですよ。ですから、ちょっとした痛みでも、ショックを受けてしばらく放心状態になったりぼーっとしたりするかもしれないんですよ」

「小さい犬のほうが、大きい犬より痛みに弱いんですか?」
涙をすすりながら訊く彼女。

『まあそりゃ家の犬はヒザの高さから落ちてもなんともないっていうか、そもそも落ちる前に足がつくっていうか……』と犬の飼い主x7は思い、『家の猫は二階から落ちても平気だしなあ……』と猫の飼い主x2は思いました。多分。間違いなく。

そしてその後、チワワン劇場を固唾をのんで見守った9人は、それぞれの大切なペット達を待ちながら、チワワン一家が結局なんともなかったプチチワワンちゃんを抱っこし、満面の笑顔で帰って行くのをボーっと見送りました。

奇妙な時間を共有した9人は、その後言葉を交わす事はありませんでしたが、なんとなく『まあ。でもあれだ。なんともなくてとにかくよかったよね……』
という空気を共有し、癒された気持ちでその場をそれぞれ去って行きました。

ここは、様々なスペシャリストの獣医さんが集まっている病院なので、おそらく通っているペット達はちょっと難しい問題を抱えている場合が多いはず。
それでも、お互いのペットの様子を心配しあったり労り合ったり、情報を交換したりして、「あなたのワンちゃんもニャンちゃんも、元気出してね」「良くなって良かったね」「早く良くなってね」っていう気持ちを分け合えるっていうのは、とっても勇気づけられます。
ちなみにこの病院は、ローカルの獣医さんからの紹介状がなければ診察はしてもらえません(救急は24時間受付です)。
スタッフもドクター達も、とてもスイートで優秀な素晴らしい動物病院です。
チョビはDr.ハミルトンの患者の中で一番高齢らしく、毎回
『チョビがこんなにしっかり歩けるなんて』
『チョビがこんなにしっかり愛想良くできるなんて』
と褒めてもらえ、時々ナースのお姉さんにチューまでしてもらっています。
ペットはいつも元気で健康でいることがお仕事みたいなもの。
でも、何かあった時には、この病院は超おすすめです。

Fifth Avenue Veterinary Specialists

Phone: 212-924-3311
Fax: 212-924-7228
One West 15th Street
New York, NY 10011


↓美しいジャーパンシェパードちゃんも、茶色い巻き毛ちゃんもみんなガン患者。切ないな……。
twitter/reikotakeuchi
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コメント

『チワワ劇場』っていうタイトルが秀逸です!

投稿: ロンドン野郎 | 2011年9月15日 (木) 00時40分

わぁ、凄いテンぱりかたですねぇ。しかし私も当事者になったらけっこう同じかも?ペットのこと以外でもよくそういう風になってしまってる気が・・・(焦っ)
それはともかく、チョビちゃんの治療が長丁場なのに、リンコさんが罪悪感持っちゃうのは危険ですよ。チョビちゃんがゴハンゴハンって言ってるんだから、大丈夫。気にしないで治療続けてくださいね。

投稿: KIYO | 2011年9月13日 (火) 11時01分

ちっちゃい犬の場合は低いところから落っことしても脚を脱臼したりするから、パニックになるのわかります。
前にポメラニアンを飼っていたけど、ふ~わふ~わでも脚すごく細いから痛めやすかったです。チワワも同じはず。(ふわふわでないけど。)

投稿: パドミニ | 2011年9月13日 (火) 08時12分

チョビちゃま、まずまずの容態のようで一安心です^^
ホントによい子ですね。

そしてチワワ劇場、笑えましたがそこまでチワワのことを心配する彼女はとてもいい人だと思いました。
きっとすごくかわいがっているんでしょうね。
ペットが飼い主さんから愛されてかわいがられている姿はとても微笑ましく、安心できるものです。
世の中には不幸な境遇のペットもたくさんいますから・・・

チョビちゃまがこれからも元気で楽しく暮らせますように☆

投稿: yayo | 2011年9月13日 (火) 02時06分

ペットの飼い主さんって、自分の体よりペットの体の方が大事だったりしますから…その女性が慌てるのもわかりますが…やっぱりいざとなると、女性の方がパニックになるんですねえ…

投稿: Maggie | 2011年9月13日 (火) 01時57分

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